冬季クローズのゴルフ場は「休んでいない」。
結論から言います。ゴルフ場が冬季クローズしている間、スタッフは来シーズンに向けた準備で最も忙しい時期を迎えています。
北海道のゴルフ場でも、11月下旬のクローズ日に「やっと休める」と思ったのは大間違いでした。翌日から始まる膨大な作業量を見て、「営業期間より大変じゃないか」と感じるほど実は忙しいです。
1.日本全国のゴルフ場冬季クローズ時期と開場時期

日本全国のゴルフ場の冬季クローズ時期を会場時期をざっとですがまとめました。旅行などの計画に役立ててください。
北海道・東北地方:最長5カ月のクローズ
北海道
- クローズ期間:11月中旬〜4月下旬
- 積雪量によっては5月連休明けまで開場できないコースも
札幌近郊の「札幌ゴルフクラブ輪厚コース」は例年11月15日前後にクローズし、翌年4月25日頃オープンします。この約5カ月半が、グリーンキーパーにとって最も重要な準備期間です。
東北(青森・秋田・岩手・山形の内陸部)
- クローズ期間:12月上旬〜4月上旬
- 標高の高いコースは11月末から閉鎖
青森県の「青森ロイヤルゴルフクラブ」では、12月1日クローズ、翌年4月10日頃の開場が恒例です。
東北(宮城・福島の平地・太平洋側)
- クローズ期間:1月中旬〜3月中旬(短期クローズ)
- 年によっては通年営業も可能
関東甲信越:標高で大きく変わる
長野・群馬・新潟の高原コース
- クローズ期間:11月下旬〜4月中旬
- 標高1,000m以上のコースは北海道並みの期間
軽井沢の「軽井沢72ゴルフ」は、11月下旬から翌年4月中旬まで冬季クローズします。
関東平野部
- 基本的に通年営業
- 降雪時のみ一時クローズ
中部・関西・中国・四国
日本海側(石川・福井・鳥取など)
- クローズ期間:12月中旬〜3月下旬
- 豪雪地帯のコースは4月まで
太平洋側・瀬戸内海側
- 通年営業が基本
- 凍結防止のため早朝スタート制限がある程度
九州・沖縄
- 基本的に通年営業
- 阿蘇や霧島など標高の高い一部コースで1〜2月に短期クローズあり
2.クローズ期間中、ゴルフ場は何をしているのか

最優先は「芝生の養生と管理」
これが全てです。雪の下でも芝は生きています。
北海道のコースで実際にやっていた作業
11月中旬、最終営業日を終えた翌日から始まるのが「冬囲い」です。グリーン周辺の樹木に防雪ネットを張り、風で枝が折れて芝を傷つけないようにします。
12月〜2月は週1回、積雪状況を確認。雪が偏って積もると芝が蒸れて病気になるため、必要に応じてスノーモービルで踏み固める作業をします。これ、知らない人が多いんですが重要な作業です。
3月から本格的な雪解け作業。グリーン上の雪を人力で除雪し、早く太陽光を当てて芝の目覚めを促します。ここで手を抜くと、開場時期が2週間遅れます。
コース改修・メンテナンス
バンカーの砂入れ替え
営業期間中はできない大規模作業の代表格。18ホール全てのバンカー、多いコースだと80カ所以上あります。
僕が働いていたコースでは、12月上旬から1月末まで、毎日3〜4カ所ずつ古い砂を掘り出し、新しい砂を入れていました。1カ所あたり軽トラック5〜6台分。地味ですが、この作業が春のコンディションを決めます。
排水設備の点検と改修
冬の間に配管の破損箇所を見つけて修理。春の雨でコースが水浸しにならないための重要な作業です。
実際、僕がいたコースでは、ある年の冬に排水管の修理を怠った結果、春の大雨で9番ホールが池のようになり、1週間クローズせざるを得なくなりました。
ティーグラウンドの張り替え
営業中は補修程度しかできませんが、冬季は芝の全面張り替えが可能。特に使用頻度の高いレギュラーティーは毎年張り替えるコースもあります。
機械のメンテナンス
グリーンモアの分解整備
春から秋まで毎日使うグリーンモア(芝刈り機)を、冬の間に完全分解してオーバーホールします。刃の研磨、エンジンの整備、油圧系統のチェック。
外部業者に出すと1台30万円以上かかるため、ベテランスタッフが場内の整備工場で作業します。僕も先輩に教わりながら、刃の調整だけで丸1日かかった記憶があります。
カート・運搬車の整備
50台以上あるカートのバッテリー交換、タイヤ交換、ブレーキ点検。これも冬季の重要な作業です。
3.会員権はどうなるのか?完全解説

クローズ期間中の会員権の扱い
ここが多くの会員が気にするポイントです。
年会費は減額されない
結論、ほとんどのゴルフ場で年会費は据え置きです。「5カ月クローズなのに?」と思われるかもしれませんが、理由があります。
僕が勤めていたコースの経営陣から聞いた話では、「冬季の維持管理費は営業期間と同等かそれ以上かかる。スタッフの雇用も維持しなければならない」とのことでした。
実際、除雪作業、機械整備、改修工事で冬季も人件費・設備費は発生し続けます。
プレー可能日数による調整はあるか?
一部の高級会員制コースでは、年間プレー保証日数を設定しているところもあります。
例えば「年間250日以上営業できなかった場合、翌年の年会費を5%減額」といった規定を持つコースも存在しますが、これは稀です。
会員権の価値はクローズ期間で変わるか
北海道と関東のコースで価格差がある理由
同じグレードのコースでも、北海道の5カ月クローズコースと、関東の通年営業コースでは、会員権価格に2〜3割の差があります。
例を挙げると:
- 札幌近郊の名門コース会員権:200〜300万円
- 関東の同格コース会員権:400〜600万円
この差は「年間プレー可能回数」が直接反映されています。
ただし、コースの質は別問題
北海道の名門コース(札幌GC、小樽CCなど)は、短い営業期間でも会員権価値が高く維持されています。理由は「夏のコンディションが最高レベル」だから。
冷涼な気候で芝が最高の状態を保てる7〜9月の価値が、冬季クローズのデメリットを上回っているわけです。
倒産リスクとクローズ期間の関係
正直に言います。冬季クローズが長いゴルフ場は、経営が厳しいケースが多いです。
冬季の固定費が重くのしかかる
僕が働いていたコースの経営資料(当時、経理部門で見る機会がありました)では:
- 年間収入:約6億円(5月〜11月の7カ月間で稼ぐ)
- 年間支出:約5.5億円(うち冬季4カ月で1.8億円)
冬季は収入ゼロなのに、スタッフ人件費、施設維持費、借入金返済で毎月4,000万円以上が出ていく計算でした。
この資金繰りができなくなると、倒産します。実際、2000年代に北海道・東北で複数のゴルフ場が冬季資金繰りに失敗し、破綻しました。
会員が知っておくべき経営指標
- 夏季の稼働率が平日60%、土日90%を下回ると危険信号
- 会員権価格が3年で半値以下になったら要注意
- 経営会社の財務諸表(公開されていれば)の流動比率が100%以下は黄色信号
4.他の地域コースとの提携システム

冬季相互利用協定
これは会員にとってメリットが大きいシステムです。
北海道の「札幌ゴルフクラブ」会員は、冬季(12月〜3月)に沖縄県の提携コース「琉球ゴルフ倶楽部」をメンバー料金でプレーできる協定があります。
実際の料金比較
- 通常ビジター料金:18,000円
- 提携会員料金:8,000円
こうした提携は、北海道・東北のコース会員権の付加価値になっています。
系列コースでの優待
大手ゴルフ場運営会社(PGM、アコーディアなど)が経営するコースでは、会員が全国の系列コースを優待料金で利用できます。
ただし、これは「会員制コース」ではなく「パブリックコースの会員制度」の話なので、厳密な会員権とは異なります。
5.冬季クローズしないための努力

融雪システムの導入事例
長野県の「軽井沢高原ゴルフ倶楽部」では、2015年に一部グリーンに融雪システムを導入し、営業期間を2週間延長することに成功しました。
初期投資は約2億円。グリーン下に温水パイプを埋設し、雪を溶かす仕組みです。費用対効果としては微妙ですが、会員サービスとして評価されています。
屋内練習場・レストランの通年営業
北海道の「シャトレーゼカントリークラブ札幌」では、コースはクローズしても、併設の屋内練習場とレストランは冬季も営業しています。
これにより:
- 会員のつなぎ止め効果
- 冬季の固定費一部カバー
- スタッフの通年雇用維持
という複数のメリットを得ています。
6.スタッフの冬季雇用問題

季節労働者としての現実
正直、これが一番厳しい現実です。
北海道のゴルフ場では、グリーンキーパーやキャディの多くが「季節雇用」。冬季は雇用保険(失業手当)で生活するか、別の仕事を探します。
僕の同僚だったキャディさん(40代女性)は、冬季はスキー場のレストランで働いていました。「毎年、春まで無事に暮らせるか不安」と話していたのが印象的でした。
通年雇用を実現しているコース
一部の経営体力があるコースでは、冬季もスタッフを解雇せず、以下の対応をしています:
- コース改修作業に従事(グリーンキーパーは元々通年)
- 系列ホテルや飲食店への出向
- 新規コース開発の手伝い
ただし、これができるのは大手運営会社か、会員権価格が高い名門コースだけです。
7.会員として知っておくべきこと

入会時期はクローズ明けがねらい目
北海道・東北のコースに入会を考えているなら、4〜5月の開場直後がチャンスです。
理由は、冬季の資金繰りを終えたゴルフ場が「春の会員権販売キャンペーン」を打つことが多いから。実際、相場より20〜30%安く購入できる事例を何度も見ました。
クローズ前の「納会コンペ」には参加すべき
11月の最終営業日前後に開催される納会コンペ。これは会員同士、スタッフとの交流の場であり、コースの経営状況を肌で感じる機会でもあります。
スタッフの様子、コースの手入れ具合、参加会員数。これらから「このコース、来年も大丈夫か」が見えてきます。
8.失敗談:クローズを甘く見た結果

僕がゴルフ場で働く前、別のコースの会員だった時期があります。
そのコースは「12月〜3月クローズ」でしたが、ある年の11月末、急な寒波で予定より2週間早くクローズを余儀なくされました。
問題は、11月のプレー料金を前払いしていた会員(僕を含む)への返金対応。結局「翌年のプレー券」として処理されましたが、一部の会員は納得せず、小さなトラブルになりました。
この経験から学んだのは:
- クローズ予定日の2週間前以降の予約は慎重に
- 年間フリーパスでなく、都度払いの方が柔軟
- 天候リスクは常にある
まとめ:オフシーズンこそゴルフ場の真価が問われる
ゴルフ場のオフシーズンは「休業期間」ではなく「準備期間」です。
会員にとって重要なのは:
- 自分のコースが冬季、どんな作業をしているか知ること
- 会員権の価値が、クローズ期間とどう関係するか理解すること
- 経営状況を常にウォッチすること
そして何より、春の開場日、手入れの行き届いた美しいコースでプレーできる喜びは、冬を越したからこそ味わえるものです。
北海道のゴルフ場で働いていた時、4月の開場準備で雪解けのグリーンを見た瞬間、「ああ、今年もこの景色が見られた」と毎年思いました。
オフシーズンがあるコースの会員権を持つということは、その「待つ喜び」も含めて楽しむことなのかもしれません。


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