過酷な4日間熱闘!スコットランドで開催した2023年全英オープンゴルフ結果まとめ

British Open 2023

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2023年7月20~23日に開催された世界最古のゴルフ大会、全英オープンが終わり、これで今年の男子メジャー大会はすべて終了しました。

惜しくも日本のエース・松山英樹選手は最終日追い上げるも13位タイで終わりましたが、さすがのショットメーカーぶりを見せてくれました。それでは今年の全英オープンの熱闘をお伝えします。

1.日本人が知らない全英オープンゴルフのロイヤルレベル

日本では江戸時代末期の1860年に創設されたスコットランドで開催される最古のゴルフ大会です。

毎年7月に開催されている全英オープンゴルフは歴史がとても深く最も高貴な大会であることが日本ではイメージしにくいので、あえて初めに解説することにしました。(結果を早く知りたいという方は飛ばしてください!)日本で例えるとなんといったらいいのでしょうか、天皇家の側近が主催するゴルフ大会といったらその高貴レベルが想像できますでしょうか。それだけ権威が高い大会ということが伝われば嬉しいです。

今年で1151回となりました。日本人からするとそんな前からゴルフ大会があったとは、すごい歴史を感じますね。主催は英国のゴルフ団体R&A(ロイヤル&エンシェントゴルフクラブ)で毎年7月に開催されています。

ロイヤル&エンシェントゴルフクラブ
画像出典:ロイヤル・アンド・エンシェント・ゴルフ・クラブ・オブ・セント・アンドリュース

メジャーの中でも一番歴史と伝統ある大会であり、正式名称は「THE OPEN Championship」となっていて「全英」とか「ゴルフ」の文字はありません。これが権威の高さを表わしていると思います。

THE OPEN Championship公式サイト

ちなみにスポーツ界でも有数の歴史を誇るテニスのウインブルドン選手権が1877年からなのでそれよりも17年も早く始まったと考えるとゴルフの歴史を分かりやすく感じられますでしょうか。

全英オープンゴルフはスコットランドおよびイングランドのリンクスコースを中心とした英国の8つのゴルフコースを持ち回りで開催されていて今年は「ロイヤル」の称号を持つコースの一つでもあるロイヤル・リバピール・ゴルフクラブ(後述)でした。

優勝者に贈られるクラレットジャグは1873年に初めて贈呈されたトロフィーであらゆるスポーツの中で最も伝統的なトロフィーのひとつです。


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出場資格は以下5つの条件をクリアした選手のみが出場することができます。

  • 歴代の優勝者で大会最終日時点において満60歳以下(前年、前々年優勝者は年齢制限なし)
  • 当年5月第4週時点で世界ランキング50位以内
  • 前年欧州ツアー(DPツアー)賞金ランキング30位以内
  • 過去5年の全英以外(マスターズ、全米オープン、全米プロ)のメジャーチャンピオン
  • 当年の全英アマ選手権優勝者および前年全米アマ選手権優勝者

日本国内の条件は次項です。

  • 前年の日本オープン優勝者
  • 当年の「ミズノオープン」上位4名(すでに有資格者除く)

日本人および日本ツアー参戦プロも毎年数名が参加しています。

2023年全英オープンに日本から出場した選手は9名。(順不同・敬称略)
松山英樹選手を筆頭に、星野陸也、蝉川泰果、中島啓太、金谷拓実、平田憲聖、比嘉一貴、岩田寛、安森一貴

2.会場はイングランドで2番目に古い名門コース

今回の会場は「ロイヤル・リバプール・ゴルフクラブ」でした。1896年開場のイングランドで2番目に古い名門コースで、すぐ近くの村「ホイレイク」がこのコースの愛称となっています。7月の日本は30度や40度も超える夏日ですが、7月のイングランドは平均最高気温23度とかなり過ごしやすい気候です。

アイリッシュ海を臨む美しいリンクスコースですが、フェアウエイも狭く、全英名物のポットバンカーが行く手を阻む難しいコースです。

全英オープンの開催は今年で13回目で、近々では2014年にローリー・マキロイ、2006年にはタイガー・ウッズがここでの全英チャンピオンになっています。そしてさらに、「球聖」と呼ばれる伝説のアマチュゴルファー、ボビー・ジョーンズが1年間に4つのメジャーを制す「真のグランドスラム」を達成したのがこの「ロイヤル・リバプール・ゴルフクラブ」なのです。1930年のことでした。

注:ボビー・ジョーンズは生涯アマチュアを通したため、当時のグランドスラムは「全米オープン」「全米アマ」「全英アマ」「全英オープン」の4冠

ロイヤル・リバプール・ゴルフクラブ 
7,383ヤード PAR71
所在地:英国イングランド リバプール郊外
設計:ロバート・チェンバース&ジョージ・モリス(改造 ドナルド・スティール)
開場:1869年

3.優勝者は世界ランキング26位だったブライアン・ハーマン選手(現在は10位)

それでは最後に初メジャー制覇を飾った全英オープン2023の優勝者をご紹介します。

優勝:ブライアン・ハーマン  13アンダー
国籍:アメリカ ジョージア州サバンナ出身  
年齢:1987年1月19日生まれ 36歳
身長・体重:170cm、68kg
プロ転向:2009年
世界ランキング:10位(7月24日付)←全英オープン前26位から大きくジャンプアップ

プロ転向後はウェブドットコムツアー(下部ツアー)で経験を積み、2011年末のQスクールで8位通過。
12年からPGAツアー本格参戦。170㎝の小柄なレフティーとして注目される。
2014年-ジョンディアクラシックでツアー初優勝
2017年-ウエルズファーゴ選手権でツアー2勝目
2023年-全英オープンでメジャー初制覇
スタッツからはドライビングディタンスでは144位(293Y)であるが、フェアウエイキープ率8位(67.6%)、リカバリー率(パーオンしなかったホールでパー以下であがる)2位(66.9%)、サンドセーブ率(バンカーに入れたホールでパー以下であがる)8位(62%)などが成績を支えていることが分かる。

ブライアン・ハーマン選手は、サバンナ出身ということで、釣りや狩によく出かける様子で、インスタには捕獲した獲物との写真がアップされていました。日本でなかなかできる趣味(?)ではないので驚きです。狩で鍛えた集中力や過酷な環境でのプレー経験が好機をもたらしたのかもしれません。

それでは4日間どのような試合経過だったのか次項でまとめたので解説していきます。

4.4日間の熱闘!試合経過・状況・観戦記

2023年全英オープン4日間の熱闘をまとめました。今年も昨年と同様、全英オープンとしては比較的風も弱く、いい天気、穏やかな気候の中行われたように感じました。最終日以外は。

初日(2023年7月20日)

初日にいきなり65(6アンダー)を叩き出しトップに立ったのは、地元イングランドのトミー・フリートウッド。同じく首位に立ったのはアルゼンチンのエミリアノ・グリジョ、そしてもう一人驚いたのが南アフリカのアマチュア、クリスト・ランプレクトでした。ランプレプトは本年度の「全英アマ」の優勝資格でこの大会にエントリーしてア

チュアながらいきなり初日トップとなったのです。(結果74位タイでローアマ獲得)

1打差で3人、さらに1打差で6人が並ぶ混戦に。松山は1アンダーでブルックス・ケプカやザンダー・シェウフェレ、世界ランク1位のスコッティ・シェフラーなどと19位タイで初日を終えましたが、他の日本人は中島啓太の1オーバー48位タイが最高で出遅れてしまいました。

2日目(2023年7月21日)

2日目は、初日67で1打差4位タイスタートしたアメリカのブライアン・ハーマンがこの日全選手のベストスコア65をマークして一気にトップに立ちます。2位のフリートウッドを5打差も引き離す形になり2日目で独走の予感をさせました。有力どころではキャメロン・ヤングとジョーダン・スピースが8打差の7位タイ、ローリー・マキロイが9打差の11位タイといった状況でした。

松山は72とスコアを一つ落とし、イーブンパーで25位タイに後退し、69で粘った星野陸也が2オーバー39位タイで見事予選突破しました。が他7名の日本人プロは難しいコースを攻略できず崩れてすべて予選落ちでした。私がテレビ観戦していて惜しかったなあと思うのは安森一貴選手。

ミズノオープン3位で出場資格を得た25歳の無名プロは、2日目フロントナイン終了時は1オーバーで十分予選突破の可能性がありましたが、バックナインで苦しみ、パーなら予選通過できた最終18番でもボギーを叩いてしまい、惜しくも1打差(4オーバー)で予選落ち。

安森選手は海外でのゴルフが初めてということでしたが初の海外、初のメジャーで大健闘だったと思います。これから日本ツアーでも注目したい選手です。

3日目(2023年7月22日)

3日目は時間帯によって雨が降り風も影響する少しずつ全英オープンらしい天候になる中、ハーマンはきっちり69で回り、トータル12アンダーで首位を守りました。ヤングが66で追いすがるも5打差の2位。フリートウッドも伸ばせず、ジェイソン・デイなどと並んで7打差4位タイ。

この日すごかったのは、ジョン・ラーム。パターが面白いように入り、8バーディ、ノーボギーの63で前日の39位タイから一気に単独3位まで浮上しました。
松山はショットもパットも悪くないように見え2つスコア伸ばすも首位とは10打差の17位タイでした。

先月の全米オープン覇者のウインダム・クラークはシャウフェレやリッキー・ファウラーと並ぶ1アンダー24位タイでした。

最終日(2023年7月23日)

雨風が強くなり、気温も下がって本来の全英らしい?天候の中最終日を迎えました。先にスタートしたビッグネームの爆発も期待されましたが、なかなか大きく伸ばせる選手が出ない中、最終組でスタートしたハーマンがプレッシャーからか少しショットがぶれる場面は見られましたが、リンクスの洗礼を受けながらも落ち着いたプレーがひかりました。地元の大声援を受けたマキロイが奮闘するも68で6アンダー6位タイに上がるのがやっと。

差があまり縮まらない中、淡々とプレーするハーマン、前半パープレーでまとめほぼ優勝を決めた感がありました。最終日バックナイン、14番、15番の連続バーディで勝負あり。結局最終日も1打伸ばし、13アンダーとしたハーマンが多くのメジャーチャンピオン含む強豪を引き離し6打差で圧勝。ハーマンにとって6年ぶりのツアー優勝、そして36歳にして見事初メジャー制覇を成し遂げました。

レフティーの全英優勝は2013年のフィル・ミケルソン以来史上3人目です。

松山は前半でダボなどもありスコアを崩すものの後半3バーディで盛り返すなどスコアを粘るプレーを見せながら3アンダー、13位タイで今年のメジャー最終戦を終えました。星野陸也は3つのバーディを奪うものの、トリプリボギーを2つも叩くなど崩れ、77で結果60位タイで終わりました。

まとめ

今年の全英オープンは一般の日本人と体格も変わらない170cmのレフティーの優勝で幕を閉じました。PGAのドライビングディスタンスでは144位(それでも293ヤードですが)の選手です。ハーマンの優勝で「俺にもできるかも」勇気をもらった日本人プロも多いのでは?と推測します。

今回出場した日本人プレーヤーは9人でしたが、予選を突破できたのは松山選手以外には星野陸也選手のみと寂しい結果でしたが、四大メジャーの中でも一番日本人に向いているのは「全英オープン」とも言われるのでいつか日本人チャンピオンが誕生する日まで毎年楽しみに待ちたいです。

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